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首相「三大関門」突破で続投狙い【点描・永田町】

2025年01月28日14時30分

政治ジャーナリスト・泉 宏

 2025年の日本政治は、多事多難だった前年以上の混迷政局が想定されている。昨年暮れの臨時国会を何とか乗り切った石破茂首相だが、通常国会後の夏には、12年に1度重なる東京都議選と参院選が控えており、「そこまでたどり着けるかどうかも不透明」(自民長老)というのが大方の見方だ。そうした中、政権運営の〝主役〟となる首相の年末年始の「大胆な政局発言」(政治ジャーナリスト)が、与野党双方に複雑な波紋を広げている。

 25年度予算案など重要法案否決や内閣不信任決議案可決には衆院解散で対抗する可能性を示唆する一方で、「大連立」や「衆参同日選」にも言及するなど、「本来の宰相の立場を踏み越える発言」(同)を連発したからだ。

 そもそも、少数与党による「宙づり国会」に苦闘する首相にとって、与野党攻防の表舞台となる通常国会での「予算年度内成立」と「内閣不信任」への対応、さらには7月20日投開票が見込まれる次期参院選での「与党過半数確保」が、政権維持への「三大関門」であることは間違いない。これも踏まえ、首相はあえて「場合によっては『7・20衆参同日選』での大勝負に打って出る覚悟をアピールすることで、政局運営の主導権確保への強い意欲を示した」(自民長老)と受け止められている。

 確かに、野党の足並みの乱れを誘う形で昨年暮れの臨時国会を乗り切り、「超短命政権」の危機を脱した首相に対し、与党内からも「思った以上に強(したた)かな粘り腰なので、夏以降の政権維持も可能性がある」(政治ジャーナリスト)との声も出始めている。 ただ、その前提となる、「7月政治決戦」については、「参院選単独ならよくて五分五分、同日選で野党が共闘態勢をつくれば、一気に政権交代の可能性もある」(選挙アナリスト)との見方が多く、自民党内の反石破勢力は「参院選で大幅に議席を減らせば、その時点で〝ポスト石破〟の動きが始まる」(旧安倍派若手)と身構えるなど、首相の政権維持戦略の成否は極めて不透明だ。

思惑絡みの「大連立」「同日選」発言

 首相の一連の発言を振り返ると、まず仕事納めともなった昨年12月27日の内外情勢調査会講演会で「予算案や極めて重要な法案が否決された場合、衆院の意思と内閣の意思とどっちが正しいか国民に決めていただくことは当然あり得べきこと」と予算案否決や不信任案可決に、衆院解散で対抗する考えを強調した。

 もちろん、「野党に賛成していただかなければ(衆院で)予算も法案も通すことはできない中で、それ(解散)をやるとか、そういうけんのんな物騒なことを言っているわけではまったくない」と〝煙幕〟も張ったが、解散権を持つ首相としての発言だけに、「与野党双方への〝脅し〟と受け止められたのは当然」(自民長老)だ。これに続き、首相は翌28日に出演した民放テレビ報道番組で、野党が会期末に内閣不信任案を提出した場合の「衆参同日選」に言及。さらに元日に放送された(収録は2024年12月24日)ラジオ番組では、与野党の主要政党による「大連立」政権の可能性についても、「選択肢としてはあるだろう」と語った。

 一連の発言について永田町では「与野党双方に〝石破主導〟の政局運営を意識させるのが狙い」(閣僚経験者)との受け止めが大勢だ。ただ、通常国会冒頭からの与野党論戦で野党側の追及材料になることは避けられず、政府・与党幹部から「本来、同日選や大連立などを口にすること自体が、トップリーダーとしての資質や見識が問われる」との厳しい声が相次いでいるのが実情だ。

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◆時事通信社「地方行政」より転載。地方行政のお申し込みはこちら

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