【会見詳報】フジテレビ社長は何を語ったか◆動画撮影不可、出席者制限も 中居正広さん問題

2025年01月20日18時00分

 タレントの中居正広さん(52)が女性とトラブルを起こし、多額の解決金を支払ったとされる問題は、フジテレビ社員が関与した疑惑が浮上し、同社の港浩一社長が記者会見で謝罪する事態に発展しました。フジテレビ側は今後、第三者の弁護士を中心にした調査委員会を設置すると表明しましたが、動画撮影や出席者を制限した記者会見の対応には批判が出ており、スポンサー企業がCMを差し止める動きも加速しています。記者会見でのやり取りや経緯を詳報します。(時事ドットコム取材班)

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定例会見を「前倒し」

 フジテレビが「港浩一社長が17日に記者会見を開く」と発表したのは、前日の2025年1月16日のこと。新聞社や通信社14社で構成する「ラジオ・テレビ記者会」が、月内に役員による記者会見を開くよう申し入れていたのを受け、通常2月に行われる定例社長会見を前倒しする形で実現した。

 記者会見に出席できたのは、ラジオ・テレビ記者会の加盟社1社あたり2人まで。加盟していないNHKや民放各局もオブザーバーとして参加が認められたものの、週刊誌やウェブメディア、フリー記者らは出席できなかった。内容の報道ができるのは会見終了後とされ、生中継や動画撮影は不可。写真撮影も、会見の冒頭一定時間のみ許可された。

 会見はフジテレビ本社10階の大会議室で、17日午後3時から約1時間45分にわたって実施された。

港浩一社長の冒頭発言(全文)

 このたび、一連の報道により、視聴者の皆様を始め、関係者の皆様に多大なご迷惑、ご心配をお掛けしていますこと、および、現在まで弊社から説明ができていなかったことについて、おわび申し上げます。

 今日までにいただいたご意見、ご批判については、真摯に受け止めております。ここまで、報道で指摘されたことの事実関係や、会社の対応が十分だったのかなどについて、昨年来、外部の弁護士の助言を受けながら社内で確認を進めてきました。本日は、それを踏まえてのご説明をさせていただきます。

 一方で、第三者の視点を入れて、改めて調査を行う必要性を認識しましたので、今後、第三者の弁護士を中心とする調査委員会を立ち上げることとしました。こちらについては、後ほどご説明させていただきます。

 なお本日は、これまでの私どもの認識についてご説明させていただきたいと考えておりますが、調査委員会の調査に委ねることとなり、社長の私自身も今後調査を受ける立場となるため、この場での説明には限りがございます。その点、どうかご理解賜りたくお願い申し上げます。

 併せて、改めて申し上げておきたいことがございます。この件は、当事者の女性が事案に関して直接的な発信はされておりません。当社も個人の特定につながるような発信は避けるべきだと考えています。具体的かつ詳細の説明には限りがございます。また、当事者間の示談の守秘義務があることから、私たちが把握した内容に限界もあることもご了承ください。

 プライバシーの保護や人権を尊重していきたいというのは、事の発端から今現在に至るまで、私どもの変わらぬ思いです。このため、どうかご理解賜りたくお願い申し上げます。

 まず弊社は、発端となった事案について、直後に認識しておりました。2023年6月初旬となります。女性の様子の変化に気づいた社員が声を掛け、話を聞いたところ、当事者2人の間の場で起きた、極めてセンシティブな領域の問題でした。女性の体調面の状況把握が第一と考え、医師の診断を受けていただきました。

 医師は診断後、速やかに別の専門医に相談。以降、その専門医の指導に基づき対応していくこととなりました。当時の判断として、事案を公にせず、他者に知られずに仕事に復帰したいという女性の意思を尊重し、心身の回復とプライバシーの保護を最優先に対応して参りました。この件は、会社としては、極めて秘匿性の高い事案として判断していました。

 中居氏について申し上げます。先ほど申しましたように、まずは女性の心身のケアを最優先に努めておりました。それゆえ、会社として中居氏への正式な聞き取りを含めた調査に着手することは、より多くの人間がこの件を知る状況を生むため、女性のプライバシーが守られなかったり、女性の意思が十分尊重されないのではないかという点で、大きな懸念がありました。当時の対応が適切だったかどうかにつきましては、今後調べていただきたいと思います。

 一方、事案からしばらくして、中居氏から、女性と問題が起きていると連絡がありました。詳しくは申し上げられませんが、中居氏の事案についての認識も確認しておりました。その後、両者で示談の動きが進んでいるとの情報も聞いておりました。

 中居氏が出演している番組「だれかtoなかい」については、唐突に終了することで憶測が生じることを懸念して、慎重に終了のタイミングをはかっておりました。プライバシーを守ること、体調面の配慮、中居氏側の認識、示談が進んでいたことなどから、番組については難しい判断がございました。

 なお、女性から相談を受け、日々向き合っていた社員を非難する一部報道もありましたが、私はそうは思っておりません。限られた社員が連携して日々対応しておりましたが、報告は私まで上がってきておりましたので、対応に関する判断は私の責任となります。

 私としては、随時報告を受けながら、とにかく心身の安全を最優先する方針で対応してきたつもりでありました。

 一方で、女性が私たちの思いとは別の受け止め方をされているという年末からの一部報道があり、今となっては対応が適切だったのかどうか、と思うところもあります。

 私からは一旦以上となります。ここまで申し上げてきたことは、現時点で私が確認をしている概要となりますが、一連の対応についての事実関係については調査結果を待ちたいと思います。会社の責任を矮小化するつもりはなく、そのために第三者の弁護士を中心とする調査委員会に調査を行っていただきます。そこでは私の判断も含めて徹底的に調査していただきたいと思っています。

 いずれにしましても、出演者、取材先、取引先などの関係性については、改めて誠実に向き合い、社のコンプライアンスガイドラインの徹底に一層努めて参ります。

石原正人常務の発言

 今回、この調査委員会は、社長の港も調査を受ける立場になっていることもあり、私の方から説明いたします。今回の件につきましては、昨年来、外部の弁護士に助言をいただきながら調査をして参りましたが、このたび、新たに第三者である弁護士を中心とした調査委員会を発足させ、体制をさらに強化して調査、検証を行うことにしました。専門性、独立性の高い弁護士の方に調査をしていただき、調査結果がまとまりましたら、速やかに公表して参ります。

 なお、調査委員会の調査が想定されるポイントの一つとして挙げさせていただきますが、例えばですが、本件食事会と弊社社員の関与の有無がございます。これについて、当該社員の聞き取りのほか、通信履歴なども含めて調査、確認を行った結果を受け、弊社ホームページにおいて見解をお伝えしました。中居氏が出した声明文においても、当事者以外の者、すなわち中居氏と女性以外の第三者が関与した事実を否定しています。ただこの点につきましても、調査委員会の調査に委ねたいと思っております。

「回答控える」連発

 続いて、出席者からの質疑応答の時間が設けられた。港社長は大半の質問に「(冒頭発言で)説明した以上の回答は控えたい」「調査委員会の調査に委ねる」と繰り返し、プライバシー保護なども理由に、説明を避ける場面が目立った。やりとりの中から、主な質問とフジテレビ側の回答を抜粋する。

 ―被害女性は23年6月当時、フジテレビの社員だったのか。

 お答えできない。個人の特定につながる質問にはお答えできませんので。

 ―昨年12月にフジテレビのホームページで「一切の社員の関与はない」というコメントを出した。あの時点で否定した根拠は。

 当該社員の聞き取りのほか、通信履歴。あまり全部を申し上げると調査委員会の調査に支障が出るので申し上げられないが、もろもろ調べた結果、ホームページに掲載したものが正しいと。(週刊誌)記事自体事実でないと、否定するという弊社の見解をお伝えしたということになります。

 ―関与したのは(フジテレビ)幹部という週刊誌報道があるが。

 それもちょっと特定につながるので。

 ―関わった社員の現在の処遇、どういう立場にあるかは。

 お答えできない。

 ―一連の報道では港氏の名前も出ていた。食事会の中で女性社員の方が同席していたというような記載もあったが。

 通常、番組製作や企業活動に伴って、出演者やプロダクションなど取引先と懇親の場を持つことはもちろんあります。これ以上のことは私も調査対象ですので、お答えは控えさせていただきます。

 ―懇親の場を持つことはあったと。週刊誌報道にあるような性的接触はあったか。

 全くないと私は思って、信じております。

 ―「上司に言われたから(懇親の場に)行かないといけない」ということが起こりうるのでは。

 そういう社風ではないと思う。参加したくない人はしないというふうにやってきたと思うので。

 ―社長として被害女性に何かコメントはあるか。

 先ほど申し上げたことに付け加えることはないが、被害女性に対して何かということであれば、「活躍を祈ります」という言葉です。

「CM差し止め」急加速

 記者会見後、スポンサー企業の間では、フジテレビへのCM出稿を差し止める動きが加速した。日産自動車は、人気長寿アニメ「サザエさん」へのCM出稿を1月19日放映分から差し止め。セブン&アイ・ホールディングスも一連の報道を受け、フジで放映している傘下のセブン―イレブン・ジャパンのCMを公共広告に差し替えた。日本マクドナルドも、順次フジテレビでのCM放送を差し止め、ACジャパンの公共広告に切り替えると明らかにした。

 トヨタ自動車や日本生命保険、NTT東日本、サントリーホールディングス、アフラック生命保険など、CM差し止めの動きはスポンサー各社に急速に広がっている。花王は1月18日放映分からフジテレビへのCM出稿を全て取りやめたといい、今後については「フジテレビ側の考え方や発表内容などを総合的に判断して決定する」と説明した。

 放映の差し止めや差し替えは各社が自主判断で行うため、スポンサー側によるCM出稿費用の負担は必要になるとみられる。

有識者「視聴者の感覚とかけ離れている」

 企業統治に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は、フジテレビの対応について「率先して会見したわけではなく、問題発覚後に追い詰められて対応したにすぎない」と指摘。「株主や視聴者らの感覚とかけ離れている」と厳しく批判した。

 オープンな形での記者会見としなかったことについては「事の重大さや、世の中からどう見られているかへの感度が鈍い」と指弾。トラブルへの対応については「2023年6月のトラブル発生後、内輪の論理で物事を進めたかったのだろう。人権擁護の姿勢が極めて脆弱だ。生まれ変わるには経営陣の交代が求められる」と強調した。


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