「停戦始まったが、終わりではない」 支援は「希望のメッセージ」―ガザから訴え【解説委員室から】

2025年01月30日11時00分

 イスラエルとイスラム組織ハマスによる停戦合意が1月19日、パレスチナ自治区ガザで発効した。停戦合意後、ガザ在住の人道支援活動家、ザヘル・サビーハさんから国際NGO「ピースボート」にビデオメッセージが届けられた。

 サビーハさんはピースボートの支援活動仲間で、ガザの子どもたちへの教育支援や病院への支援を続けてきた。イスラエルの攻撃後は妹を亡くし、空爆で家も破壊されたという。「ガザの状況は壊滅的」とし、停戦後も国際社会の支援を訴えている。以下、ピースボートに届いた3分余のビデオメッセージを紹介する。(時事通信解説委員 村田純一)

 皆さん、(停戦合意が発効した)きょうは心を寄せ、決意を固く、こうしてお集まりいただきありがとうございます。470日にわたる大量虐殺と戦争を経たガザから初めて皆さんにお話しします。

 停戦合意が発効し、きょうは大きな希望を持ってお話しします。ガザでの停戦は、数え切れないほど多くの人々の生活を覆ってきた暗闇の中に差す、かすかな光です。

 皆さん、ガザの状況は壊滅的です。ガザの人々は想像を絶する苦難に耐えてきました。苦境に負けない粘り強さと力が、これでもかというほどに試されてきました。

 2023年10月に暴力がエスカレートして以来、ガザに暮らす何万人もの人々が死傷し、何千もの家屋、学校、生活に不可欠なインフラが破壊されました。この戦争で人々は砲撃や攻撃を受けて何度も避難を余儀なくされています。イスラエル政府は飢餓を、ガザ地区における戦闘の一つの手段として使っています。

 今ガザでは、まともな飲み水、食料、電気、医療品を確保することが、人々にとって日々の闘いです。長引く戦争の影響に加えて、援助物資の搬入が制限され続けているため、子どもたちの栄養失調は急速に広がり、かつてないほどに壊滅的なレベルに達しています。

 親愛なる皆さん、停戦がきょう始まります。恐らく私たちは「ジェノサイドを生き延びた」と言えるのでしょう。しかし、思うのです。こんなにも大規模な破壊の後、私たちは人間らしい生き方を保つことができたのでしょうか。

 今、私たちはこれまで以上に、生活を取り戻し、立て直すために皆さんの支援を必要としています。皆さんの支援によって届くのは、野菜だけではなく、希望です。

 皆さんの寄付は、単なる支援ではなく、それを超えたものなのです。絶望的な状況にあるコミュニティーにかすかな希望と、負けないと思う力をくれるのです。

 このキャンペーンは単なる食料支援だけではなく、メッセージなのだと思います。「私たちはあなたたちを見ている、思っている、そして見捨てない」と。

 停戦は始まりであり、終わりではありません。手を取り合えば、この停戦を復興、希望、尊厳、そしてより健全な未来へのチャンスへの転換点とすることができます。

 皆さんの大きな心、人としての良心、そして希望と団結の力を信じてくださることに感謝します。

 私たちが力を合わせれば、体だけでなく心にもエネルギーを届け、きょうの困難をあすの約束に変えることができると信じています。

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