米連邦準備制度理事会(FRB)は29日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、4会合ぶりに政策金利を据え置いた。景気が好調を維持する中、足元のインフレ率は「幾分高いまま」(FOMC声明)だ。トランプ政権の高関税政策や人工知能(AI)投資ブームによる景気過熱懸念など、インフレ再燃の「火種」は尽きず、FRBは当面金利を維持するとの見方が浮上している。
◇急ぐ必要ない
「一段のインフレ動向を確認したい」「政策調整を急ぐ必要はない」。パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、追加利下げについて問われるごとに、そう繰り返した。
昨年12月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.9%上昇と、伸び率が3カ月連続で拡大。一方で同月の失業率は前月から0.1ポイント改善の4.1%と「非常に良い水準」(パウエル氏)にある。FRBが金融緩和を積極的に進める理由は見当たらない状況だ。
一方、市場では根強いインフレが当分続くとの見方が徐々に広がっている。昨年9月以降、FRBは計1%の利下げを行ったが、長期金利の指標となる10年物米国債利回りは上昇基調だ。
米資産運用大手ブラックロックのフィンク最高経営責任者(CEO)は先週、スイスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のパネル討論で「債券市場の動向は、インフレが想定よりも高くなる可能性があることを示唆している」と指摘。AI普及に伴うデータセンターや電力生産に関連した投資増、労働者不足による賃金上昇圧力などを列挙した。
◇圧力続く
さらに、トランプ大統領が近く導入を表明している関税引き上げが、経済や物価の動向を巡る不透明感を高めている。パウエル氏は、関税の期間や規模、対象国などに関する想定の「範囲が極めて広い」と指摘。「事態の推移を見守らなければならない」と述べるにとどめた。
第1次政権時と同じく、トランプ氏の金融政策への露骨な圧力も、FRBの政策運営に影を落とす。トランプ氏はダボス会議のビデオ演説で「即座の金利引き下げを要求する」と明言。これに対し、パウエル氏は「トランプ氏の発言が何であれ、コメントしない」と語り、粛々とインフレ抑制と雇用最大化の責務に取り組む意思を示した。
トランプ氏はFRBの政策決定を受け、SNSへの投稿で早速「パウエル氏とFRBはインフレの問題を止めるのに失敗した」と批判した。トランプ氏はビジネス経験から「FRBより金利に詳しい」と自負する。インフレが収まらず、利下げに動けないなら、FRBへの圧力は一層強まりそうだ。(ワシントン時事)