党勢回復の糸口を模索する公明党が、自民党との距離感を測りかねている。今夏に参院選や東京都議選を控える中、2025年度予算案の修正を狙う野党各党の動きに埋没することを懸念。派閥裏金事件や選択的夫婦別姓で、自民を突き上げている。ただ、自民とのすきま風は選挙協力に悪影響を与えかねず、対応に苦慮している。
与野党、参考人招致折り合わず 公明は採決なら賛成―衆院予算委
◇「与党ぼけ」
「合意形成の要役、政策実現の推進力として全力を挙げていく」。公明の斉藤鉄夫代表は28日、衆院本会議の代表質問で党の存在意義をアピール。一方で、自公連立が「政治の安定」につながるとの決まり文句は影を潜めた。
昨秋の衆院選で公明の議席は大きく減少。自民の「裏金議員」の推薦で批判が直撃した記憶は生々しく、党幹部は「与党ぼけしてしまった」と悔やむ。「年収の壁」見直しで国民民主党、教育無償化で日本維新の会が、それぞれ存在感を示す中、公明内には「独自色を出さなければ」(若手)との焦りがくすぶる。
民意のありかを探る公明が注力するテーマの一つが、党是の「平和」と関わる核廃絶への取り組みだ。代表質問で、斉藤氏は核なき世界へ「日本は特別な使命を負っている」と強調。核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を見送る政府方針の再考を促した。
自民が慎重姿勢を崩さない選択的夫婦別姓でも、斉藤氏は制度導入に向け「与党が案を決め、野党に相談するのが筋だ」と主張。石破茂首相は「十分に意見交換していきたい」と応じた。
◇トラウマ
逆風の要因となった裏金事件に関し、斉藤氏は「最後まで(政治)改革を成し遂げないといけない」と指摘。28日の自公幹事長会談では、野党が予算審議の前提とする旧安倍派会計責任者(当時)の参考人招致について、議決の際は賛成に回る方針を伝えた。
もっとも、招致を巡っては27日の党内協議で反対論も相次いだ。公明には連立入り前の1990年代、支持母体・創価学会との「政教一致」批判を強める自民の攻勢で、学会の秋谷栄之助会長(当時)が参考人として国会質疑に応じた「トラウマ」がある。公明関係者は「司法判断も出た民間人を呼ぶのは禍根を残す」と懸念を示した。
◇差別化
参院選や、その前哨戦となる都議選をにらみ、公明は自民との「差別化」を図りたい考え。ただ、自公の選挙協力は各地で定着しており、反発を招けば逆効果となる可能性もはらむ。
「いいとこ取りだ」。実際、自民内では公明の招致賛成の方針に不快感が広がり、斉藤氏が「党として決めていない」と記者団に釈明する一幕もあった。
連立与党として財政規律を意識せざるを得ず、主張のトーンが落ちている面も否めない。28日の代表質問で、国民民主の西岡秀子氏は税収増が見込まれることに触れ、「税金の取り過ぎだ」と批判。大幅な「年収の壁」見直しを首相に迫った。これに対し、斉藤氏は「議論の大前提は財源が明確であることだ」と一線を画した。
「あちらを立てればこちらが立たない。暗中模索だ」。公明幹部はこう漏らした。